今日のふとす

モットーは「毎日開店」。

まちの本屋さん

以前、25年近くずっと住んでいたアパートから、

一番近くにあった本屋の名を「ブックスあんどう」といった。

「あんどうブックス」といったかもしれない、定かではない。

どちらにせよ、個人で経営していたであろうその本屋は、今はもうない。

雑誌、小説、マンガ、新書、参考書、辞書、18禁などなど、

様々なジャンルをちょうどよく網羅している、「ザ・まちの本屋さん」だった。

 

学生のころ、マンガやスポーツ雑誌を買うときも、

なにも買いたい本がないときも、とりあえずよく足を運んでいた。

コンビニしかり、小さいお店では、お客として店に入ったあと、

なにも買わずに店から出てくるのは、けっこう抵抗があるものだと思う。

しかし「ブックスあんどう」は、なにか違った。

「冷やかしでもいいからいらっしゃい」と言ってくれているようだった。

そう勝手にぼくは感じていた。

そのおかげで、心はふわっと軽くなり、

何も買わずとも気軽に出入りできていたように思う。

そして、本に囲まれた場所に身を置くことで感じる興奮と安心感を、

いつでも味わうことができていたのだ。

 

そんな奴らが跋扈したおかげで、

店の経営が傾いてしまったのかどうかはわからないが、

しだいに18禁のスペースが広がっていたことは、

今も覚えている。

それからしばらくして、気がついたときには、

お店は閉まっていたのだった。

今思い出すと、本屋でうろうろしていた時間は、

ぼくにとってとても贅沢で、大切なものだったと感じる。

その時間をプレゼントしてくれた「ブックスあんどう」か、

「あんどうブックス」のお店の方々には心から感謝したい。

 

かつて本屋だったその場所も、

今では行列のできるタンメン屋になりました。

席よりも、厨房のほうが広いんじゃないかと思う店内は、

幾多の本が佇んでいた場所なんですよね。

そんな感慨に浸ることもなく、

スープに浸る麺をすすりまして、

ぼくは静かにおいしさを噛みしめるのでありました。