今日のふとす

モットーは「毎日開店」。

桜の木

仕事で訪れたところの近くに桜の並木道があった。

桜は半分くらい咲いていて、強く吹く風に揺られていた。

本当に久しぶりに間近で桜を見た気がする。

それもそのはずで、お花見なんてしばらくしていない。

花だけじゃなく、つぼみや幹もじっくりと見てみた。

心の中で「これが桜である」とつぶやいていた。

 

しばらくして、

木にクモのような黒い虫がいることに気がついた。

よくよく見ると、何匹もいた。

 「これはなかなか」と思い、

桜の木から離れたぼくはさっそくグーグルでその虫の身元を調べる。

するとどうやら、

「サシガメ」というカメムシの仲間だということがわかった。

暖かくなってきて、冬ごもりから目覚めた幼虫が、

脱皮して活動を始めたらしい。

こんなところにも春を感じている生き物がいるのだ、

などと感慨深い気持ちにはまったくなれないくらい、

なかなかにグロテスクな虫だった。

一つの木にわーっとたくさん群がっていたのも、

より強力な印象をぼくに与えてくれた。

 

この地球に群がる生き物のぼくは、

ふだん地球を意識することなく暮らしている。

あのサシガメという虫は、桜を知っているんだろうか。

桜のもつ美しさや、寂しさを感じたりするんだろうか。

知ってなくても、感じてなくても、

虫は桜の木の上で生きていくのだろう。

それはこっちも同じなわけで、

何かを感じているかどうかに関わらず、

ぼくはここで生きていくのだ。

 

どこにでもありそうな小さな喜びを感じたい。

思いがけないつらさだって、それはそれでちゃんと感じたい。

美しさや汚らしさ、あらゆる感じられることを感じたい。

今感じていることを大事にすることは、

生きることにまっすぐつながっていると思うのだ。