今日のふとす

モットーは「毎日開店」。

花粉症

花粉症と聞くと思い出すことがある。

高校生のころ、ぼくはサッカー部だった。

その日は休日で朝から練習があったのだけれど、

とてつもなく風が強かったことを覚えている。

四方八方に動きを変える突風の中で練習前のアップをしていると、

しだいにぼくの目はしぱしぱしてきた。

涙と鼻水が止まらない。

目がかゆくて開けていられなくなってきた。

恐れてはいたけれど、認めたくないけれど、

これはもう完全に花粉症だと思った。

 

おそろしく強い風とともに、

一斉に花粉群がやってきたおかげで、

ぼくがその矢おもてになったのだ、なぜか。

なぜだ?

そんな自問自答を繰り返したのち、

「俺はたった今、花粉症になった」

そう現実を受け入れた。

その衝撃はすさまじく、

ぼくをとぼとぼと部室に帰らせた。

サッカーの練習どころではない。

これから俺は花粉症を抱えて生きていかなくてはならないのだ。

 

聞くところによると、

人はだれもが花粉がたまる器のようなものを鼻の奥に持っているらしい。

その器の大きさは人によって違いがあり、

そこに花粉がたまってゆく。

そして、器からあふれだしたときに人は晴れて、

花粉症を発症するそうだ。

ホントかどうかは知らない。

しかしそのときのぼくは、

そんな劇的な瞬間に立ち会ってしまったと思っていた。

暗澹たる気持ちで部室に戻り、

かゆみの止まらぬ目を閉じてしばし佇んでいた。

 

しばらくして、

「なんとか治せないものだろうか」という想いが、

ふつふつと湧いてきた。

そして、もうここまでかゆいのなら、

いっそのこと風の中へ飛び込んでゆこう。

徹夜明けのアドレナリンが出まくっているみつばちよろしく、

目をがんがんに見開いてこちらから花粉を集める気持ちで、

グラウンドで動き回ろうという結論に至った。

そうなのだ、ぼくはヤケを起こしていたのだ。

その後、勇んで飛び込んだぼくを待っていたのは、

まさかの回復だったのだ。

かゆみも涙もおさまり、

何事もなかったかのようにその日の練習を終えることができた。

 

「あえて飛び込む」という逆転の発想から、

あらためて今ぼくは思う。

あれは結局、花粉症ではなかったのではないか、と。

じゃあなんだったんだろうと思うのだけれど、

花粉症じゃないことにこしたことはない。

この時期になって花粉症の話題になると、

いつもぼくはこの話を思い出すのだ。

そして、「もう花粉症はいいわ」と、

心の中でだけつぶやくのである。